近年、ネットショッピングやドラッグストアで、一般の方が自宅で歯石を除去するための器具が手軽に購入できるようになりました。歯石が目立つ部分に付着すると、見た目が気になるだけでなく、舌で触るとザラザラとした感触が不快で、自分で取り除きたいと思う方も少なくありません。しかし、私たち歯科医師・歯科衛生士の立場から見ると、自己流の歯石除去には多くのリスクやデメリット、危険性が伴います。

自宅で歯石を取ることの危険性

まず、歯石は非常に硬く、これを取り除くための器具は鋭利に作られています。市販の器具も同様で、正しい使用方法を知らないまま使用すると、歯や歯肉（歯ぐき）を傷つけるリスクがあります。特に、正確な角度や手の動き、歯の形状に合わせた操作が必要で、これを誤ると歯肉に傷がつき、そこから炎症が広がるリスクが高まります。結果として、歯周病の悪化を招く可能性もあります。
さらに、自宅での歯石除去では、目に見える部分しかケアできないという限界があります。特に奥歯や視界に入らない部分の清掃は難しく、口腔内の暗い部分では取り残しが生じやすくなります。また、歯周ポケット内にある歯石（歯肉縁下歯石）は目視で確認することができないため、感覚に頼る必要があり、取り残しが発生しやすいです。これにより、歯垢が更に付着し、全体の症状が悪化するリスクが高まります。

歯科医院での歯石除去の必要性

歯石は歯と歯肉の溝（歯周ポケット）にもたまりやすく、この部分に蓄積する歯石は「歯肉縁下歯石」と呼ばれます。歯肉縁下歯石は、酸素を嫌う細菌によって形成され、非常にしっかりと歯に付着しているため、一般の方が自宅で除去するのは非常に難しいです。
このような見えない部分の歯石を効果的に除去するためには、専門的な知識と技術を持った歯科医師や歯科衛生士による診断と処置が必要です。歯科医院では、専用の器具や技術を駆使して、安全かつ効果的に歯石を除去することが可能です。また、歯石除去と同時に歯周病の予防や治療も行うことができるため、総合的な口腔ケアがしていただくことができます。

まとめ

自宅での歯石除去は、コストの面や自分の都合に合わせて行えるという短期的なメリットがあるように思えるかもしれません。しかし、長期的に見れば、自己流のケアは口腔内の健康を損なうリスクが高く、おすすめできません。ぜひ、歯科医院で専門のスタッフによる歯石除去やお掃除を受けていただき、健康な歯を維持するお手伝いをさせていただければと思います。

監修：医療法人隆歩会理事長　歯学博士　福原隆久